令和4年度 解説 午前の部

 ChatGPTの最新データは、2021年9月までとなっています。その後の、法改正、判例等は反映されませんので、設問の内容によっては、ネット情報でデータを検索している、BingChat を使用したいと思います。
 ChatGPTは同じ質問をしても、毎回少しずつ答えが変わります。設問の仕方によっても回答が変わると考えますが、本試験どおりの内容で質問します。
 ChatGPT の回答及び私の見解に誤りが出る可能性大です。各自、自己責任にて参考にしてください。
 コメントいただければ、なるべく応えたいと思います。仕様上、ブログの「司法書士試験を ChatGPT で解く!!」のタイトルをクリックすれば、コメント入力できます。

なお「模範」とあるのは「模範六法」を指し、「詳細」とあるのは「詳細登記六法」を指す。

第1 問

 人格権又は人格的利益に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、将 来ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。

  イ 人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当 該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成す る。

  ウ ある著作者の著作物が公立図書館において閲覧に供されている場合には、当該著作 者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値す る人格的利益とはいえない。

  エ 前科は人の名誉に直接にかかわる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開 されないという法律上の保護に値する利益を有する。

1 アウ  2 アエ  3 イエ  4 イオ  5 ウオ

ChatGPT の回答

誤っている組み合わせは、「4. イオ」です。

理由は次のとおりです:

ア 名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。 → この記述は、名誉権の保護や侵害行為の差止めを求めることに関する人格権の趣旨に合致しています。

イ 人の氏名、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合において、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利は、人格権に由来する権利の一内容を構成する。 → この記述は、商品の販売や顧客吸引力を利用する権利が人格権に由来する権利の一部を構成することを述べています。判例の趣旨においても、氏名や肖像権が商品の販売や顧客吸引力に関与する場合には、人格権の範囲に含まれるとされています。したがって、この記述は正しいです。

ウ ある著作者の著作物が公立図書館において閲覧に供されている場合には、当該著作者が当該著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益は、法的保護に値する人格的利益とはいえない。 → この記述は、著作者の著作物によって思想や意見が公衆に伝達されることに関する人格的利益について述べています。判例の趣旨においても、著作物による思想や意見の伝達は人格的利益として法的保護に値するとされています。したがって、この記述は誤りです。

エ 前科は人の名誉に直接にかかわる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。 → この記述は、前科の公開に関する法的保護の利益について述べています。判例の趣旨においても、前科の公開には一定の制限が認められることがあります。したがって、この記述は正しいです。

オ 人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない。 → この記述は、人格権や法的保護に値する人格的利益が自然人にのみ認められるという性質について述べています。判例の趣旨においても、人格的利益は通常、自然人に対して認められますが、一部の例外的な状況において法人にも一部認められることがあります。したがって、この記述は誤りです。

以上を考慮すると、誤っている組み合わせは、「4. イオ」です。

私の見解

 正解は、 5 ウオ
 ChatGPTは、判例の趣旨に照らし 誤っているのは、ウ、オ、と正しく判断しているのに、なぜか回答では、イ、オを選択している。ChatGPT 恐るべし。
 オの「で人格権や法的保護に値する人格的利益は、その性質上、自然人にのみ認められ、法人には認められない」と断定するのは誤りだと比較的分かりやすい。すると他に誤っているのは、設問より、イかウになるが、やや難しい問題。


第2 問

 憲法第14 条第1 項に規定する法の下の平等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 障害福祉年金の受給者は児童扶養手当の受給資格を欠く旨の規定は、これにより障害福祉年金受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関し合理的理由のない不当な差別が生じることから、違憲である。

 イ 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子について、父母の婚姻及取得を認める一方で、日本国民である父から認知されただけの嫡出でない子についてはこれを認めないという区別は、我が国との密接な結び付きを有する者に限り日本国籍を付与するという立法目的との間において合理的関連性を欠き、違憲である。

 ウ ある議員定数配分の下で施行された国会議員の選挙において投票価値の平等につき違憲状態が生じていたとしても、その選挙が実施されるまでにその定数配分の見直しが行われなかったことが国会の裁量権の限界を超えないと、憲法に違反しないと認められる場合がある。

 エ 嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の相続分の2 分の1 とする規定は、民法が採用する法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものであり、立法府に与えられた合理的な裁量の限界を超えるものではなく、憲法に違反しない。

 オ 尊属に対する殺人罪のみその法定刑を加重して死刑又は無期懲役とする規定は、尊属に対する尊重報恩という道義を保護するという立法目的が不合理であり、違憲である。

(参考)
憲法
第14 条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 ・3  (略)

1 アイ   2 アエ  3 イウ  4 ウオ  5 エオ

ChatGPT の回答

正しい組み合わせは「2 アエ」です。

アエの記述は判例の趣旨に照らして正しいです。アの記述は障害福祉年金の受給者と児童扶養手当の受給資格に関する差別が不当であるとし、イの記述は日本国籍の取得に関する規定の違憲性を指摘しています。これらの記述は憲法第14条第1項に規定される法の下の平等の原則に基づいており、判例の趣旨に合致しています。

私の見解

 正解は、 3 イウ
 どうした、ChatGPT!イの説明を除き、誤った説明を。エ、オは最重要判、設問の誤りは明らか。すると、正解は、1または3に絞り込める。
 

第3 問

 国会に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 国会議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された国会議員は、当該国会議員の属する議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 イ 国会議員は、それぞれ国政に関する調査を行い、これに関して、記録の提出を要求する権限を有する。

 ウ 法律案は先に衆議院に提出しなければならないが、予算は先に参議院に提出することも許される。

 エ 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

 オ 国会議員が国会での法律案の審議の際に、職務とはかかわりなく不当な目的をもって事実を摘示し個別の国民の名誉又は信用を低下させたとしても、当該国会議員は院外で損害賠償責任を問われることはなく、当該国会議員の質疑について国が損害賠償責任を負うこともない。

1  アウ   2  アエ   3  イエ   4  イオ   5  ウオ

ChatGPT の回答

正しい組み合わせは、3 イエです。

判例の趣旨に照らすと、次の記述が正しいです:

イ 国会議員は、それぞれ国政に関する調査を行い、これに関して、記録の提出を要求する権限を有する。

判例では、国会議員が国政に関する調査を行い、その過程で必要な証拠や記録の提出を要求する権限が認められています。これは国会議員の重要な機能の一つであり、情報収集や政府の監視を目的としています。

私の見解

 正解は、2 アエ
 ChatGPT は誤った説明をしています。オ(最判平9.9.9)以外は条文問題。

 憲法は、条文と重要判例を正確に押さえておく必要があります。見慣れない判例が絡み、他の枝からも正解を導き出せない場合、諦めも肝心です。他で正解を増やしましょう。

第4 問

 未成年者に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。


 ア 未成年者は、法定代理人の同意を得なくても、債務の免除を受けることができる。


 イ 未成年者が委任による代理人としてした法律行為については、行為能力の制限を理由として取り消すことができる。


 ウ 未成年者が法定代理人の同意を得ないで法律行為をした場合には、当該未成年者は、法定代理人の同意がなければ行為能力の制限を理由として当該法律行為を取り消すことができない。


 エ 未成年者が特定の営業について法定代理人の許可を受けた場合には、その営業に関する法律行為については、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。


 オ 未成年者を一方当事者とする売買契約が行為能力の制限を理由として取り消されて無効となった場合には、当該売買契約に基づく債務の履行として給付を受けた相手方は、現に利益を受けている限度において、その給付について返還の義務を負う。


1 アウ   2 アエ   3 イウ   4 イオ   5 エオ

BingChat の回答 ※ChatGPTの最新データは、2021年9月までなので、本問は、ネット情報でデータを検索している、BingChat を使用ます。

 未成年者に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

ア 未成年者は、法定代理人の同意を得なくても、債務の免除を受けることができる。

イ 未成年者が委任による代理人としてした法律行為については、行為能力の制限を理由として取り消すことができる。

ウ 未成年者が法定代理人の同意を得ないで法律行為をした場合には、当該未成年者は、法定代理人の同意がなければ行為能力の制限を理由として当該法律行為を取り消すことができない。

エ 未成年者が特定の営業について法定代理人の許可を受けた場合には、その営業に関する法律行為については、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。

オ 未成年者を一方当事者とする売買契約が行為能力の制限を理由として取り消されて無効となった場合には、当該売買契約に基づく債務の履行として給付を受けた相手方は、現に利益を受けている限度において、その給付について返還の義務を負う。

正しいものの組合せは、「アウ」です。

私の見解

 正解は、2 アエ
 アが正しくイ、ウが誤りなのは、受験生の常識。オはやや紛らわしいが「現に利益を受けている限度において、その給付について返還の義務を負う。」のは未成年者であって相手方ではないので誤り。イについては、今後、令和2年4月1日施行の、民102但し書きに注意。

 

第5 問

 代理に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 委任による代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。

 イ 代理人が本人のためにすることを示さずに意思表示をした場合であっても、その権限内において本人のためにした行為は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

 ウ 代理人が保佐開始の審判を受けた場合には、代理権は消滅する。

 エ 同一人物が、債権者及び債務者双方の代理人として代物弁済をする場合であっても、債権者及び債務者双方があらかじめ許諾していたときは、無権代理行為とはみなされない。

 オ 法人が代理人によって動産を買った場合において、売主が無権利者であることについて、当該法人の代表者が善意無過失であっても、代理人が悪意であったときは、当該法人は、当該動産を即時取得することはできない。

1 アイ   2 アウ  3 イオ   4 ウエ  5 エオ

 ※残念ながら、憲法第1問を除き、 ChatGPTは、正解を導くことができませんので、今回から、ChatGPTの回答を省きます。

私の見解

 正解は、5 エオ
  ア、イ、ウの誤りは受験生必須の事項。すると、エ、オの理解が乏しくても、正解は5となる。オは「最判昭47.11.21」を確認する(模範六法では民192に掲載)。

 

第6 問

 時効に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5までのうち、どれか。

 ア 貸金の返還の訴えが提起された後、その訴えが取り下げられた場合には、時効の完成猶予の効力は生じない。

 イ 債権者が債務者の財産に仮差押えをした場合には、時効の完成が猶予され、その事由が終了した時から、新たに時効が進行する。
 
 ウ 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、時効の完成が猶予されている間に、再度、権利についての協議を行う旨の合意がされた場合においては、当該合意による時効の完成猶予の効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5 年を超えることができない。

 エ 催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告があった場合には、再度の催告があった時から6 か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。

 オ 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより財産開示手続が実施された場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。

1 アエ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 ウオ

 正解は、5 ウオ
  ア、エの誤りは受験生必須の事項。すると、正解は、3または4に絞られる。改正により「強制執行等」と「仮差押等」が分けられ、「仮差押等」はあくまでも仮の処分であり、債務名義をもっている「強制執行等」と差を付けられ、時効の更新の効力が付与されなかったことが頭にあれば、イは誤りと判断できる。ウ(民151第2項)がやや不明でも、正解は5に絞られる。

 

第7 問

 不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア Aがその所有する甲土地をBの強迫によりBに売却してその旨の登記をし、Bが強迫につき善意無過失のCに甲土地を売却してその旨の登記をした場合であっても、その後、AがBとの間の売買契約を強迫を理由として取り消したときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができる。

 イ Aの所有する甲土地を時効により取得したBは、その時効の完成前にAから甲土地を購入してその旨の登記をしたCに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

 ウ Aがその所有する甲土地をBに売却し、その旨の登記をした後、Bの債務不履行により当該売買契約を解除した場合において、その後、BがCに甲土地を売却し、その旨の登記をしたときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

 エ A及びBが甲土地を共同相続したが、Aが、Bに無断で、甲土地を単独で相続した旨の登記をした上で甲土地をCに売却し、AからCへの所有権の移転の登記をしたときは、Bは、Cに対し、甲土地の持分を主張することができない。

 オ Aがその所有する甲土地をBに遺贈する旨の遺言を残して死亡し、Bが遺贈の承認をした場合において、その後、Aを単独で相続したCに対して債権を有するDが、Cが甲土地を相続したものとして代位による所有権の移転の登記をした上で甲土地を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、Bは、Dに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

1 アウ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 エオ

 正解は、4 イエ
 被脅迫者の要保護性、対抗問題か否か、登記の公信力、にかかる良問。オを除き、一般的受験生なら確実正答できるようにしたい。


第8 問

 即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア A所有の甲動産につき無権利のBが、Cとの間で、Cに対する金銭債務の履行に代えて甲動産の給付をする旨の代物弁済契約をしてCに現実の引渡しをした場合において、CがBの無権利につき善意無過失であるときは、Cは、甲動産を即時取得する。

 イ 未成年者Aがその所有する甲動産をBに売却して現実の引渡しをした後、AB間の売買契約が未成年であることを理由に取り消されたが、その後、Bが、取消しにつき善意無過失のCに甲動産を売却して現実の引渡しをした場合には、Cは、甲動産を即時取得する。

 ウ A所有の甲動産につき無権利のBがCに甲動産を寄託している場合において、Bが、Bの無権利につき善意無過失のDに甲動産を売却し、Cに対して以後Dのためにこれを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、Dは、甲動産を即時取得することができない。

 エ A所有の未登録の甲自動車につき無権利のBが、Bの無権利につき善意無過失のCに甲自動車を売却して現実の引渡しをした場合には、Cは、甲自動車を即時取得することができない。

 オ A所有の甲動産をBが占有している場合において、Bの債権者Cが甲動産を差し押さえ、競売手続により、甲動産をAが所有していることにつき善意無過失のDが甲動産を買い受けたときは、Dは、甲動産を即時取得することができない。

1 アイ  2 アエ  3 イオ  4 ウエ  5 ウオ

 正解は、1 アイ
 即時取得は、占有している者が無権利者でも、その占有を信頼し取引した第三者を保護する制度。これが無いと、安心して動産取引がでない。私は、イ、ウの正誤判断はできないが、エ、オが誤りなのは比較的分かりやすく、正解は1に絞られる。

第9 問

 物権の得喪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア Aの所有する甲土地の中からBが埋蔵物を発見した場合において、その所有者が判明しないときは、Bが当該埋蔵物の単独所有権を取得する。

 イ Aの所有する甲土地にBの地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、Bが甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

 ウ Aの所有する甲土地に、Aに対する債権を被担保債権とするBの抵当権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、BがAを単独で相続したときは、Bの抵当権は消滅する。

 エ Aの所有する甲土地に、甲土地の使用収益の権原を有しないBが、その所有する種子をAに無断でまいた場合には、生育した苗の所有権は、Bに帰属する。

 オ Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときは、Aが当該増築部分の所有権を取得する。

1 アイ  2 アエ  3 イウ  4 ウオ  5 エオ

 正解は、4 ウオ
 イが誤り、ウが正しい違いを押さえる。ウは、被担保債権が権利混同により消滅し、付従性により抵当権は消滅する。

 

第10問

 地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 地上権は、一筆の土地の一部にも設定することができる。

 イ 地上権の取得時効が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在することのほかに、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。

 ウ 無償の地上権は、設定することができない。

 エ 地上権は、抵当権の目的とすることができない。

 オ 建物所有目的の地上権が設定された土地の上にある地上権者が所有する建物が強制競売に付された場合には、その建物の買受人は、その地上権を取得することができない。

1  アイ  2 アオ  3 イウ  4 ウエ  5 エオ

 正解は、1 アイ
 ウ、エが誤りなのは明らか。正解の枝は、1,2に絞られ、何れにも絡むアは正しい枝となる(ただし、登記するには分筆が必要)。オは借地借家20を参照のこと。


第11問

 次の対話は、担保物権の性質に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

教授: まず、民法の規定する担保物権全般について聞きます。民法の規定する担保物権のうち、留置権以外にも、留置的効力を有するものはありますか。
学生:ア 質権にも留置的効力があります。

教授: 民法の規定する担保物権には、付従性がありますか。
学生:イ 民法の規定する担保物権には、全て付従性があります。

教授: 民法の規定する担保物権のうち、存続期間の経過によって被担保債権から独立して消滅するものはありますか。
学生:ウ 不動産質権は、その設定が更新されないまま存続期間を経過した場合には、被担保債権の弁済期に関係なく、被担保債権から独立して消滅します。

教授: 次に、民法の規定する担保物権のうち約定担保物権について聞きます。民法の規定する約定担保物権には、優先弁済的効力がありますか。
学生:エ 民法の規定する約定担保物権には、全て優先弁済的効力があります。

教授: 民法の規定する約定担保物権は、債権を目的とすることができますか。
学生:オ 民法の規定する約定担保物権は、全て債権を目的とすることができます。

1 アイ  2 アエ  3 イオ  4 ウエ  5 ウオ

 正解は、3 イオ
 ア、エが正しく、オが誤りなのは基本。正解は、3,5に絞られがる。元本確定前の根抵当権については付従性は認められず、は正解は3となる。ウはよく分かりません。


第12問

 法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 法定地上権の成立要件が充足されていても法定地上権の成立は認めないという趣旨の特約を抵当権設定の当事者間において締結したとしても、法定地上権は成立する。

 イ 法定地上権が成立する土地の範囲は、法定地上権の対象となる建物が接地する部分に限られる。

 ウ 法定地上権の存続期間は、当事者間の協議によって定めることはできない。

 エ 地上建物に仮差押えがされ、その後、当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において、土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたものの、その後に土地が第三者に譲渡された結果、当該強制競売手続における差押えの時点では土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったときは、法定地上権は成立しない。

 オ 土地を目的とする第一順位の甲抵当権と第二順位の乙抵当権が設定され、甲抵当権設定時には土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったが、乙抵当権設定時にはこれらが同一の所有者に属していた。この場合において、甲抵当権が消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至ったときは、法定地上権が成立する。

1 アウ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 エオ

 正解は、2 アオ
 アが正しく、イ、ウが誤りなのは基本。正解は、2,5に絞られがる。エは(最判平28.12.1  模範 民執81)で誤り。よっては正解は2となるが、オはよく分かりません。


第13問

 留置権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 建物の賃借人は、賃貸人に対して有する造作買取代金債権を被担保債権として、当該建物について留置権を行使することができる。

 イ 建物の賃借人は、賃貸借契約の終了後においては、当該建物について留置権を行使する場合であっても、従前のとおり当該建物に居住することはできない。

 ウ 他人物売買の売主から目的物の引渡しを受けた買主は、所有者から当該目的物の返還請求を受けた場合には、売主に対して有する損害賠償請求権を被担保債権とする留置権を主張して返還を拒むことはできない。

 エ 留置物の所有者である債務者から当該留置物を譲り受けた第三取得者は、留置権者が留置物の占有において善良な管理者の注意を怠ったとしても、留置権の消滅請求をすることはできない。

 オ 留置権者は、留置権による競売が行われた場合には、その換価金を留置することができる。

1 アウ  2 アエ  3 イエ  4 イオ  5 ウオ

 正解は、5 ウオ
 ウは、「留置物と債権との牽連性」から正しいと推測され、オは留置権には優先弁債的効力はないが、形式的競売が認められていることから、正しいと推測される。


第14問

 権利質に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 質権者は、質権の目的となっている金銭債権について、自己の債権額に対応する部分に限り、取り立てることができる。

 イ 質権の設定者は、質権の目的となっている債権を取り立てることはできない。

 ウ 第三債務者に対する質権の設定の通知又は第三債務者の承諾が確定日付のある証書によってされなければ、質権者は、債権を目的とする質権の設定を当該第三債務者に対抗することができない。

 エ 同一の債権について複数の質権を設定することはできない。

 オ 質権は、現に発生していない債権を目的とすることができる。

1 アイ  2 アウ  3 イオ  4 ウエ  5 エオ

 正解は、4 ウエ
 ウは、「第三債務者以外の第三者」なら正しい枝(民364→民467Ⅱ)

 

第15問

 譲渡担保権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 不動産の譲渡担保権者が、その不動産に設定された先順位の抵当権の被担保債権を代位弁済したことによって取得する求償権は、当然に、譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲に含まれる。

 イ 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保権の設定者が、通常の営業の範囲内で譲渡担保権の目的を構成する個々の動産を売却した場合、買主である第三者は、当該動産について譲渡担保権の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができる。

 ウ 譲渡担保権の設定者は、譲渡担保権が実行されて目的物が確定的に譲渡担保権者の所有に帰属し又は換価処分されるまでは、その目的物を正当な権原なく占有する者に対し、その返還を請求することができる。

 エ 譲渡担保権が実行されて目的物が第三者に譲渡された場合、譲渡担保権の設定者は、第三者からの引渡請求があっても、清算金の支払を受けるまでは目的物を留置することができる。

 オ 譲渡担保権の設定者は、譲渡担保権者が清算金の支払又はその提供をせず、清算金がない旨の通知もしない間であっても、譲渡担保権の目的物の受戻権を放棄して譲渡担保権者に対して清算金の支払を請求することができる。

1 アエ  2 アオ  3 イウ  4 イオ  5 ウエ

 正解は、2 アオ
 昔から苦手な分野で、よく分かりません。

第16問

 多数当事者の債権及び債務に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 各連帯債権者は、全ての債権者のために全部の履行を請求することができる。

 イ 連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は弁済をしたものとみなされる。

 ウ 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分について他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

 エ 当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担する場合において、連帯債務者の一人が弁済をしたときは、その連帯債務者は、その弁済額が自己の負担部分を超えていなければ、他の連帯債務者に対して求償することはできない。

 オ 連帯債務者の一人に対して債務の免除がされた後、他の連帯債務者が債務の全額を弁済したときは、債務の免除を受けた連帯債務者は、債務の免除を受けたことを理由に、求償を拒むことはできない。

1 アエ  2 アオ  3 イウ  4 イオ  5 ウエ

 正解は、2 アオ
 昔から苦手な分野で、よく分かりません。ウ、オは令和2年4月1日施行の改正に関連。

第17問

 第三者のためにする契約に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア AとBが、Cを受益者とする第三者のためにする契約を締結した場合には、その契約の成立時にCが現に存在しないとしても、そのことを理由にその効力は妨げられない。

 イ AとBが、Aを諾約者とし、Bを要約者として、Cを受益者とする第三者のためにする契約を締結した場合には、Aが錯誤を理由にその意思表示の取消しをしたとしても、Cは自らが当該錯誤について善意かつ無過失であることを主張して、その契約に基づく履行を求めることができる。

 ウ AとBが、Bの所有する建物の所有権をCに移転する旨のCを受益者とする第三者のためにする契約を締結したときは、当該建物の所有権は、Cの受益の意思表示をした時期にかかわらず、その契約の成立時に、Cに移転する。

 エ AとBが、Aを諾約者とし、Bを要約者として、Cを受益者とする第三者のためにする契約を締結した場合において、Cが受益の意思表示をした後に、AがCに対する履行をしないときは、BはCの承諾を得ることなく、契約を解除することができる。

 オ AとBが、Bの所有する動産をAに譲渡し、Aがその代金をCに支払う旨の第三者のためにする契約を締結した場合には、AはBが当該動産を引き渡すまで、Cに対する代金の支払を拒絶することができる。

1 アウ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 エオ

 正解は、2 アオ
 エは、平成2年4月1日施行の改正(民538Ⅱの追加)に注意。

第18問

 使用貸借に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 契約の本旨に反する借主の使用又は収益によって生じた損害の賠償請求権については、貸主が返還を受けた時から1 年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 イ 借主が目的物の通常の必要費を支出したときは、貸主にその償還を請求することができる。

 ウ 借主が目的物の改良のための費用を支出したときは、それによる目的物の価格の増加が現存していなくても、貸主は、その支出した金額の償還をしなければならない。

 エ 借主が死亡したときは、使用貸借は終了する。

 オ 期間及び使用収益の目的の定めのない使用貸借は、貸主がいつでも解除することができる。

1 アウ  2 アオ  3 イウ  4 イエ  5 エオ

 正解は、3 イウ
 使用貸借は無償契約であることに着目する(借主の地位は弱い)。アは令和2年4月1日施行の改正(民600Ⅱの追加)。エは、貸主が死亡したときは終了しないことに注意。


第19問 

 事務管理に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 管理者は、本人が既に知っている場合を除き、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。

 イ 管理者は、本人のために有益な債務を負担したときは、本人に対して、自己に代わってその債務を弁済することを請求することができる。

 ウ 管理行為が本人の意思に反してされた場合は、本人の意思に反することがその開始時において明らかであるかどうかにかかわらず、事務管理は成立しない。

 エ 管理者は、いつでも事務管理を中止することができる。

 オ 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重過失があるのでなければ、その事務管理によって生じた損害を賠償する責任を負わない。


1  アイ   2  アウ   3  イオ   4  ウエ   5  エオ

 正解は、4  ウエ
 「・・明らかであるかどうかにかかわらず」や「いつでも」など、限定的な文言があるときは、その枝は誤りである可能性が高い。



第20問

 身分行為に係る同意若しくは承諾又は許可に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 父が胎内に在る子を認知するには、母の承諾を得なければならない。

 イ 未成年被後見人が子を認知するには、未成年後見人の同意を得なければならない。

 ウ 死亡した子Aに未成年の直系卑属Bがある場合において、Aを認知するには、Bの承諾を得る必要はない。

 エ 配偶者の未成年の孫を養子とするには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

 オ 15 歳未満の子を養子とするには、その父母であって親権を停止されているものの同意を得る必要はない。


1  アイ   2  アエ   3  イオ   4  ウエ   5  ウオ

 正解は、3  イオ 
 イが誤りなのは受験生の常識(当然、成年被後見人でも同様。意思能力は必要)。とするとイが絡むア、オを検討する。「胎内に在る子を母の同意を得ないで認知されたら、母はたまったものでない」との一般常識をイメージできるとよい。。


第21問

 成年後見監督人に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 家庭裁判所は、成年被後見人の請求がある場合には、成年後見監督人を選任しなければならない。

 イ 家庭裁判所は、成年後見監督人として、法人を選任することができる。

 ウ 家庭裁判所は、成年後見監督人の請求がある場合には、被後見人の財産の中から報酬を与えなければならない。

 エ 成年後見人が成年後見監督人の同意を得ることなく成年被後見人に代わって金銭を借り入れる契約をした場合には、成年被後見人は、その契約を取り消すことができる。

 オ 成年後見監督人は、成年後見人と成年被後見人との利益が相反する行為については、成年被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

1  アウ  2  アエ   3  イエ   4  イオ   5  ウオ

 正解は、3  イエ 
 ア「しなければならない」と「することができる」、ウ「与えなければならない」と「与えることができる」、このような文言があるときは注意。


第22問

 Aを被相続人、Aの夫であるB及びAの弟であるCを推定相続人とする相続に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア BがAに対する傷害致死罪により有罪判決を受け、この判決が確定した場合には、Bは、相続人となることができない。

 イ Bが相続に関するAの遺言書を破棄した場合であっても、それが相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、Bは、相続人となることができる。
 
 ウ CがAに重大な侮辱を加えたときは、Aは、Cの廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 エ Aの生前において、Bの廃除の審判が確定した場合であっても、Aは、いつでも、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。

 オ Aの遺言によるBの廃除の審判が確定したときは、Bの廃除は、Aの死亡の時にさかのぼって効力を生ずる。

1  アウ   2  アオ   3  イエ   4  イオ   5  ウエ

 正解は、1  アウ 
 イにつき、最判平9.1.28に注意(詳細民891⑤)




第23問

 被相続人の配偶者の居住の権利に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1 から5 までのうち、どれか。

 ア 被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、被相続人の共有持分についてのみ、配偶者居住権を成立させることができる。

 イ 配偶者居住権は、居住建物の所有者の承諾を得た場合であっても、譲渡することができない。

 ウ 配偶者短期居住権は、これを登記することにより、居住建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

 エ 配偶者居住権の設定された建物の全部が滅失して使用及び収益をすることができなくなった場合には、配偶者居住権は消滅する。

 オ 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合であっても、他の共同相続人全員が反対の意思を表示したときは、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができない。

1  アイ   2  アウ   3  イエ   4  ウオ   5  エオ